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2015.11.14

死亡事故に関する裁判例 横浜地裁平成27年5月15日判決

 【横浜地裁平成27年5月15日判決 -自保ジャーナル1953号80頁】


27歳男性の死亡逸失利益について、この裁判例は、事故前年の年収が116万1000円にすぎないものの、

「その年齢、転職の可能性、世上見られる年子序列型の賃金体系等を考慮すると、平成23年度の学歴計・全年齢平均賃金を採用し、その基礎収入を年額458万8900円と認めるのが相当である」


と認定したうえで、67歳まで40年間分の逸失利益を認めました。


また、この裁判例は、生活費控除率を50%で認定しています。

2015.11.05

死亡事故に関する裁判例 大阪地裁平成27年4月10日判決 

 【大阪地裁平成27年4月10日判決 -自保ジャーナル1952号102頁】


30歳男性アルバイト社員Aの死亡逸失利益について、この裁判例は、

「Aは死亡時に30歳であり、少なくとも37年間は就労可能であり、その間に、年齢とともに50歳代をピークとして収入の増加が見込まれること、AがC会社の正社員になる可能性があったことを考慮する」


として、基礎収入を賃金センサス平成24年第1巻第1表産業計・企業規模計・高卒計・全年齢の男性労働者の平均年収458万5100円の7割に相当する320万9570円を認定しました。


また、生活費控除率については、内妻との婚姻予定を考慮して、生活費控除40%で死亡逸失利益を認定しました。

2015.10.21

死亡事故に関する裁判例 京都地裁平成27年3月9日判決

京都地裁平成27年3月9日判決 自保ジャーナル1951号85頁

19歳男性大学生Aの死亡逸失利益の生活費控除率について、この裁判例は、


「母親を亡くし、父親であるXとその両親の4人で暮らしていたこと、本件事故当時から、Aは結婚を意識していたこと、Xは、本件事故当時49歳であり、G職員として稼働していることが認められる」


と認定したうえで、


「Aが40歳に達した時点で、Xは70歳であり、それまでにAは結婚し、Xを扶養する立場となっている蓋然性が高いということができるから、生活費控除率は、Aが40歳に達するまでは50%、それ以後は40%とみるのが相当である。」


と判断しました。

2015.10.19

死亡事故に関する裁判例 東京地裁平成27年4月16日判決

東京地裁平成27年4月16日判決 -自保ジャーナル1949号146頁

加害者が信号無視により横断歩行中の46歳男性を死亡させた事案において、この裁判例は、


「本件事故によるAの傷害は極めて重篤であったこと、Aの入院期間が946日間もの長期間に及んだこと、本件事故の態様に照らし、被告の運転行為は極めて危険なものであり、その過失は重大かつ悪質であるのに対し、Aに特段の落ち度が認められないこと等の事情に鑑み、傷害慰謝料として523万円を相当と認める。」


としたうえで、死亡慰謝料について


「Aの受傷内容及び死亡に至る経過、Aの家族構成及び生活状況等、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、Aの死亡慰謝料として2800万円を相当と認める。」


として、近親者固有の慰謝料については妻150万円、長女と二女につき各75万円を認定しました。

2015.10.18

死亡事故に関する裁判例 東京地裁平成27年3月6日判決

東京地裁平成27年3月6日判決 自保ジャーナル1949号137頁

夫と子2名の生計を維持する49歳スナックママの死亡逸失利益について、この裁判例は、直近の収入だけでなく事故前3年間の収入を認定したうえで、


「Aの死亡逸失利益を算定するに当たっては、平成24年の収入のみを基礎として算定するのは相当ではなく、本件事故前3年間の平均である207万5799円を基礎として算定するのが相当である。」


として、生活費控除率を40%、就労可能年数の終期を67歳までとして死亡逸失利益を認定しました。

2015.10.17

交通事故後に自殺した事案の裁判例

名古屋地裁平成27年3月25日判決 自保ジャーナル1949号111頁

追突されて約2月後に自殺で死亡した事案について、この裁判例は、

「交通事故は一般的にはストレス要因となり得るものであり、本件事故がAのうつ病を悪化させた一因であることは否定できないものの、比較的軽微な本件事故から、短期間の内に被害者であるAの死亡との結果が生じることは一般的に予見できる事柄とはいえない。また、上記結果は特別の事情というべきところ、被告において本件事故時にこれを予見可能であったという事情は見当たらない。」


として、本件事故と死亡との因果関係を否定しました。

2015.09.10

死亡事故に関する裁判例 岡山地裁平成27年3月3日判決

 岡山地裁平成27年3月3日判決 -自保ジャーナル89頁

お好み焼屋を営む67歳男性Aの死亡逸失利益について、この裁判例は、


「本件事故当時、年金収入として年額16万6732円があったこと、Aは、Bと同居して生活していたほか、近所に住む母の家に足繁く通い、食事を用意するなどして面倒を見ていたほか、生活費を渡していた」



としつつも、お好み焼き屋の収支状況は全く判然としないとして、Aの基礎収入を男性・学歴計・年齢別(60代後半)の平均賃金センサスの半額を認定し、生活費控除率については



「AがBと母の生活を支えていたことに照らし、生活費控除率として30%を認める」



と判断しました。

2015.09.09

死亡事故に関する裁判例 札幌地裁平成27年1月28日判決

 札幌地裁平成27年1月28日判決 -自保ジャーナル1947号147頁

夫と子と同居する40歳女子教員公務員の死亡逸失利益の生活費控除率について、この裁判例は、夫の収入とほぼ同額(正確にはそれ以上)であったから、


「性別によって生活費控除率を下げる理由はないこと、また、いずれが一家の支柱ともいい難いことを考慮すると、35%とするのが相当である」


として生活費控除率を35%認定しました。

2015.09.08

死亡事故に関する裁判例 東京地裁平成27年5月19日判決

 東京地裁平成27年5月19日判決 -自保ジャーナル1947号128頁

民法711条の類推適用に関する裁判例が出ました。

交通事故により死亡した63歳男性Aと約29年にわたり内縁関係にある原告の固有慰謝料について、この裁判例は、原告は

「Aと事実上婚姻と同様の関係にある内縁の配偶者に当たるから、民法711条の類推適用により、慰謝料請求権が認められる」

として、

「Aと原告との関係及び生活状況等、本件における一切の事情を考慮し、500万円を相当と認める。」

と判断しました。

2015.09.07

死亡事故に関する裁判例 福岡地裁平成27年5月19日判決

 福岡地裁平成27年5月19日判決 -自保ジャーナル1947号120頁

2歳男子の死亡慰謝料について、この裁判例は、本人分2400万円、両親各144万4444円、兄111万1112円の固有慰謝料を認め、合計2800万円の慰謝料を認定しました。


また、この裁判例は、駐車場内で2歳男子が轢かれて死亡した事案の過失割合についても重要な判断を下しています。

2015.08.07

死亡事故に関する裁判例 松山地裁今治支部平成27年3月10日判決

【松山地裁今治支部平成27年3月10日判決 自保ジャーナル1946号138頁】


家族と同居して家事従事していた82歳女子の死亡逸失利益について、この裁判例は、まず基礎収入を

「本件事故当時、弟と同居し、炊事、洗濯、掃除、病院への付添等の家事を行っていたことが認められ、当該家事労働は、平成24年における70歳以上女性の学歴計平均賃金295万6000円の70%に相当する206万9200円であるとの評価するのが相当である。」


と認定し、次に生活費控除率については


「生活の実情に照らすと、生活費控除率は40%と認めるのが相当である」


と判断しました。

2015.08.04

死亡事故に関する裁判例 大阪地裁平成27年1月13日判決

 【大阪地裁平成27年1月13日判決 -自保ジャーナル1945号78頁】



18歳女子短大生の死亡逸失利益について、この裁判例は、


「Aは死亡当時18歳の女子であり、現在の社会情勢や、Aが将来に向けて非常に大きな可能性を有していたことを勘案し、短大卒業後の基礎収入としては平成24年賃金センサス・男女計・全年齢・全学歴計平均賃金である472万6500円を採用するのが相当である」


したうえで、生活費控除率について





「一般的に女子の生活費控除率について30%ないし40%という数字が採用される趣旨は、基礎収入として低額な女子平均賃金を採用することとの関係で、最終的な結論の妥当性を確保することにあり、基礎収入がより高額になる場合には、その趣旨は当てはまらない。」


として、


「実際問題としても、女子平均賃金よりも高額な基礎収入を設定する場合に、被害者が女子であるからといって一律に上記割合を採用すると、男子平均賃金を基礎として、一般的な50%の生活費控除率を設定した場合の逸失利益額を遥かに超える金額が算出されることとなり、その不均衡を合理的に説明することは到底困難である。」


として、生活費控除率を45%で認定しました。

2015.06.13

死亡事案でなくても近親者固有の慰謝料は認められるか?


それでは、被害者が死亡しなかった場合には、近親者に慰謝料請求権は認められないのでしょうか。

具体的には、子が交通事故で傷害を受け、後遺障害が残ったような場合に、その親に固有の慰謝料請求権が認められるのか、ということです。

この点、判例は、近親者において死亡にも比肩すべき精神的苦痛を被ったと認められる場合には、近親者固有の慰謝料請求権が認められる、としています。

これは、民法711条が生命侵害における近親者の慰謝料請求を規定していることに鑑み、生命侵害時に限定するべきでないとしながらも、それに準ずるような場合に慰謝料請求権を認めることでバランスをとった判決であるといえるでしょう。

参考判例 最判昭和33年8月5日
原審の認定するところによれば、被上告人B1は、上告人の本件不法行為により顔面に傷害を受けた結果、判示のような外傷後遺症の症状となり果ては医療によって除去しえない著明な瘢痕を遺すにいたり、ために同女の容貌は著しい影響を受け、他面その母親である被上告人B2は、夫を戦争で失い、爾来自らの内職のみによって右B1外一児を養育しているのであり、右不法行為により精神上多大の苦痛を受けたというのである。ところで、民法七〇九条、七一〇条の各規定と対比してみると、所論民法七一一条が生命を害された者の近親者の慰籍料請求につき明文をもつて規定しているとの一事をもつて、直ちに生命侵害以外の場合はいかなる事情があってもその近親者の慰籍料請求権がすべて否定されていると解しなければならないものではなく、むしろ、前記のような原審認定の事実関係によれば、被上告人B2はその子の死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛を受けたと認められるのであつて、かかる民法七一一条所定の場合に類する本件においては、同被上告人は、同法七〇九条、七一〇条に基いて、自己の権利として慰籍料を請求しうるものと解するのが相当である。

2015.05.25

交通事故の死亡慰謝料はどのような理屈か?

被害者が交通事故により死亡した場合、遺族が慰謝料請求をすることが出来るということは感覚的に分かります。


もっとも、理論的にはどういう理屈で遺族が慰謝料請求をするということになるのでしょうか。

この点、最高裁は、死亡慰謝料について、被害者の死亡によって当然に発生し、これを放棄、免除する等特別の事情が認められない限り、被害者の相続人がこれを相続するとしています。

これを前提にして分析的に考えると「遺族の慰謝料請求=死亡した被害者自身の慰謝料請求+近親者固有の慰謝料請求」になるということですね。

もっとも、被害者の慰謝料請求権については、近親者が受けた精神的苦痛も考慮されており、被害者自身の慰謝料請求権と近親者固有の慰謝料請求権は実質的に重なっている部分があると認められること、近親者固有の慰謝料請求権の行使の有無によって慰謝料額が異なるとするのは妥当でないことから、大阪地裁の運用では、死亡慰謝料については被害者分と近親者分を含んだものとして基準額を決定しています。

参考判例 最判昭和42年11月1日

ある者が他人の故意過失によって財産以外の損害を被った場合には、その者は、財産上の損害を被った場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し、右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。そして、当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰藉料請求権を相続するものと解するのが相当である。けだし、損害賠償請求権発生の時点について、民法は、その損害が財産上のものであるか、財産以外のものであるかによって、別異の取扱いをしていないし、慰藉料請求権が発生する場合における被害法益は当該被害者の一身に専属するものであるけれども、これを侵害したことによって生ずる慰藉料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく、民法711条によれば、生命を害された被害者と一定の身分関係にある者は、被害者の取得する慰藉料請求権とは別に、固有の慰藉料請求権を取得しうるが、この両者の請求権は被害法益を異にし、併存しうるものであり、かつ、被害者の相続人は、必ずしも、同条の規定により慰藉料請求権を取得しうるものとは限らないのであるから、同条があるからといつて、慰藉料請求権が相続の対象となりえないものと解すべきではないからである。

2015.05.19

交通死亡事故の死亡慰謝料はどのような事情があると増額されるか?

  報道によれば,平成27年5月11日未明,大阪市中央区西心斎橋のアメリカ村の一角で,自転車に乗っていた大阪市在住の女性1人が外傷性くも膜下出血で死亡,もう1人が左腕骨折の重症を負ったという交通事故がありました。

 大阪府警南署は同日午後,自動車運転処罰法違反(過失致死傷)と道交法違反(酒気帯び運転)容疑で,加害者を逮捕したとのことです。
 加害者は,近くの飲食店で飲酒した後,帰宅するために車を運転したそうです。
 
 飲酒運転が厳罰化されたことから,以前に比べれば違反者数は減少しているとはいえ,まだまだ飲酒運転がらみの交通事故は後を絶ちません。
 判断能力が落ちた状態での運転が非常に危険であることはいうまでもなく,被害者の方は本当に無念だと思います。
 
 このような飲酒運転による死亡交通事故の場合,加害者に請求できる慰謝料が一般より増額される可能性があります。
 すなわち,大阪地裁の運用は,死亡慰謝料の基準について一家の支柱で2800万円,その他で2000万円~2500万円とされていますが,飲酒運転,無免許運転,著しい速度違反等加害者の悪性が強い場合には慰謝料の増額が考慮されるとされています。
 これらの場合には,被害者や遺族の受けた精神的苦痛は通常よりも大きなものであると考えられるからです。
 

2015.04.25

交通事故により後遺障害を負った被害者が事故後に別の原因で死亡した場合、将来介護費用はどうなるのか?

 先日、交通事故により後遺障害を負った被害者が、後に交通事故とは別の原因で死亡した場合、逸失利益の算定にあたってはその死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮されないということを述べた際に、将来の介護費用は別である旨を併せて述べました。

 なぜ、将来の介護費用については被害者死亡の事実が考慮されるのでしょうか。

 これは介護費用の性質に関わるといえます。
 すなわち、介護費用の賠償は、被害者において現実に支出すべき費用を補填するものであるということを本質としています。
 被害者が死亡した後は、その時点以降の介護は不要であって、実際に介護費が支払われることはなくなる、なので加害者としても介護費用の賠償が不要になるということです。
 そのため、被害者死亡の事実が将来の介護費用の賠償に影響するということになります。

参考判例
最判平成11年12月20日
交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が別の原因により死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である(最高裁平成五年(オ)第五二七号同八年四月二五日第一小法廷判決・民集五〇巻五号一二二一頁、最高裁平成五年(オ)第一九五八号同八年五月三一日第二小法廷判決・民集五〇巻六号一三二三頁参照)。これを本件について見ると、前記一の事実によれば、亡Cが本件事故に遭ってから胃がんにより死亡するまで約四年一〇箇月が経過しているところ、本件事故前、亡Cは普通に生活をしていて、胃がんの兆候はうかがわれなかったのであるから、本件において、右の特段の事情があるということはできず、亡Cの就労可能期間の認定上、その死亡の事実を考慮すべきではない。
 しかし、介護費用の賠償については、逸失利益の賠償とはおのずから別個の考慮を必要とする。すなわち、(一)介護費用の賠償は、被害者において現実に支出すべき費用を補てんするものであり、判決において将来の介護費用の支払を命ずるのは、引き続き被害者の介護を必要とする蓋然性が認められるからにほかならない。ところが、被害者が死亡すれば、その時点以降の介護は不要となるのであるから、もはや介護費用の賠償を命ずべき理由はなく、その費用をなお加害者に負担させることは、被害者ないしその遺族に根拠のない利得を与える結果となり、かえって衡平の理念に反することになる。(二)交通事故による損害賠償請求訴訟において一時金賠償方式を採る場合には、損害は交通事故の時に一定の内容のものとして発生したと観念され、交通事故後に生じた事由によって損害の内容に消長を来さないものとされるのであるが、右のように衡平性の裏付けが欠ける場合にまで、このような法的な擬制を及ぼすことは相当ではない。(三)被害者死亡後の介護費用が損害に当たらないとすると、被害者が事実審の口頭弁論終結前に死亡した場合とその後に死亡した場合とで賠償すべき損害額が異なることがあり得るが、このことは被害者死亡後の介護費用を損害として認める理由になるものではない。以上によれば、交通事故の被害者が事故後に別の原因により死亡した場合には、死亡後に要したであろう介護費用を右交通事故による損害として請求することはできないと解するのが相当である。
 

2015.04.24

交通事故により後遺障害を負った被害者が事故後に別の原因で死亡した場合、後遺障害逸失利益はどうなるのか?

 後遺障害による逸失利益は、基礎収入に労働能力喪失率を乗じ、これに労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を乗じて算定することになります。

 では、被害者が後遺障害を負った後に、交通事故とは別の原因により死亡してしまった場合にはどう考えるべきでしょうか。

 この点、被害者が死亡しているのですから、その時点で逸失利益(将来得られたであろう利益)は存在しないとする考え方もあります。
 しかし、交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていた等の特段の事情がない限り、死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものでないとするのが最高裁の考え方です。
 つまり、交通事故に遭遇し、後遺障害を負った時点で逸失利益は確定し、原則としてその後の事情変更は考慮されないということです。

 なお、将来の介護費用については、死亡後に要したであろう介護費用は交通事故による損害とは認められないとされていますので注意が必要です。


参考判例
最判平成8年4月25日
交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではないと解するのが相当である。けだし、労働能力の一部喪失による損害は、交通事故の時に一定の内容のものとして発生しているのであるから、交通事故の後に生じた事由によってその内容に消長を来すものではなく、その逸失利益の額は、交通事故当時における被害者の年齢、職業、健康状態等の個別要素と平均稼働年数、平均余命等に関する統計資料から導かれる就労可能期間に基づいて算定すべきものであって、交通事故の後に被害者が死亡したことは、前記の特段の事情のない限り、就労可能期間の認定に当たって考慮すべきものとはいえないからである。また、交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより、賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ、他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは、衡平の理念に反することになる。

2015.04.17

死亡事故の裁判例のご紹介 東京地方裁判所平成26年11月26日判決

東京地方裁判所平成26年11月26日判決 -自保ジャーナル1939号108頁

50歳女性教員の死亡逸失利益について、この裁判例は、実収入を基礎に労働可能年数67歳まで30%の生活費控除率によって死亡逸失利益を計算しました。さらに、この裁判例は、68歳以降の死亡逸失利益について、被害者が共済年金及び老齢基礎年金を受給することができたこと、被害者の平均余命が86歳までであることを認定したうえで、「共済年金及び老齢基礎年金の性質上、生活費控除率は50%とするのが相当である」と判断しました。


交通事故の実務では、死亡逸失利益の認定にあたって実収入と年金収入でそれぞれ生活費控除率の認定が異なることが多く、生活費控除率は保険会社と意見が対立する典型論点の一つといえます。

2015.04.16

死亡事故の裁判例のご紹介 神戸地方裁判所平成26年10月31日判決 

神戸地方裁判所平成26年10月31日判決 自保ジャーナル1939号98頁

19歳女性の教員志望の大学生がお亡くなりになった事案において、被害者の死亡逸失利益について、この裁判例は、「将来の蓋然性については、高等学校教員として就職することまでは認め難いが、小学校教員として就職することは認められるというべきであり、男女間格差を考慮するのは相当ではな」いとして、職種別・企業規模計・男女計・各種学校・専修学校教員・全年齢平均賃金センサス503万7200円を基礎収入として認定しました。

交通事故の実務では、未成年者や20代の方が被害にあった場合の被害者の基礎収入について、将来の収入増額の可能性を考慮して、事故当時の実収入ではなく、平均賃金センサスを用いて被害者の基礎収入を認定することが多いのですが、どの平均賃金センサスを使うのか、しばしば保険会社と意見が対立します。この裁判例では、男女間格差は考慮せず、かつ、職業によるある程度の絞込みをかけて平均賃金センサスの選択が行われています。

2015.04.10

被害者死亡の場合における逸失利益

 逸失利益とは、交通事故に遭わなければ被害者が得たであろう経済的利益を失ったことによる損害をいいます。
 具体的に言えば、被害者が交通事故に遭い死亡してしまった場合、被害者はその事故に遭わなければ相当期間生存し、仕事を継続していたことが予想され、その仕事をして得られたであろう将来の経済的利益ということです。

 逸失利益は、基礎収入(年収)から被害者本人の生活費として一定割合を控除し(生活費控除)、これに就労可能年数に応じたライプニッツ係数を乗じて算定します。
 なぜ生活費控除をするのかというと、将来得られたであろう収入においては被害者の生活費も含まれているところ、被害者が生きていればその生活費の支出が必要であるのに対し、被害者死亡の場合にはその支出を免れるので基礎とする所得額から生活費として一定割合を控除するということです。
 なお、生活費控除率については、原則として一家の支柱及び女性は30~40%、その他は50%となっています(但し、大阪地裁の運用)。

 さて、上記のような逸失利益ですが、被害者が年金収入しかない場合でも逸失利益が認められるのでしょうか。
 まず、老齢基礎年金については、逸失利益が認められるとされています(最判平成5年9月21日)。
 老齢基礎年金は受給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするとともに、その者の収入に生計を依存する家族に対しても同一の機能を営むものと認められるということが理由とされています。
 また、老齢厚生年金についても逸失利益が認められるとするのが実務です。
 なお、年金収入者の逸失利益に関しては、年金の性格からして、収入に占める生活費の割合が高いと考えられることから、生活費控除率を通常より高くすることが多いです。

 これに対し、遺族基礎年金、遺族厚生年金については、逸失利益が認められないとされています(遺族厚生年金について最判平成12年11月14日)。
 いわゆる遺族年金については、もっぱら受給権者自身の生計の維持を目的とした給付という性格を有し、受給権者自身が保険料を拠出しておらず給付と保険料との牽連性が間接的であって社会保障的性格が強いこと等が理由とされています。

参考判例 最判平成12年11月14日
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者が死亡した場合に、その遺族のうち一定の者に支給される(厚生年金保険法五八条以下)ものであるところ、その受給権者が被保険者又は被保険者であった者の死亡当時その者によって生計を維持した者に限られており、妻以外の受給権者については一定の年齢や障害の状態にあることなどが必要とされていること、受給権者の婚姻、養子縁組といった一般的に生活状況の変更を生ずることが予想される事由の発生により受給権が消滅するとされていることなどからすると、これは、専ら受給権者自身の生計の維持を目的とした給付という性格を有するものと解される。また、右年金は、受給権者自身が保険料を拠出しておらず、給付と保険料とのけん連性が間接的であるところからして、社会保障的性格の強い給付ということができる。加えて、右年金は、受給権者の婚姻、養子縁組など本人の意思により決定し得る事由により受給権が消滅するとされていて、その存続が必ずしも確実なものということもできない。これらの点にかんがみると、遺族厚生年金は、受給権者自身の生存中その生活を安定させる必要を考慮して支給するものであるから、他人の不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろう右年金は、右不法行為による損害としての逸失利益には当たらないと解するのが相当である。

2015.03.18

被害者死亡の場合における近親者固有の慰謝料

 被害者が交通事故により死亡した場合、その近親者自身も精神的苦痛を被ることから、被害者の有する慰謝料請求権とは別に近親者固有の慰謝料が認められます。
 もっとも、被害者自身の慰謝料算定においては、近親者が受けた精神的苦痛も考慮されているとして、死亡慰謝料については被害者分と近親者分をまとめて請求することが多いです。
 実際に大阪地裁の運用は、死亡慰謝料の基準について一家の支柱で2800万円、その他で2000万円~2500万円とされていますが、その基準額は本人分及び近親者分を含んだものとされています。
 では、誰が「近親者」として固有の慰謝料を請求することが出来るのでしょうか。
 加害者に対する固有の慰謝料について規定する民法711条は、父母、配偶者、子を規定しているので、それらの者が近親者にあたることは問題ありません。
 それ以外の者であっても、被害者との間に父母、配偶者、子らと実質的に同視しうべき身分関係があり、被害者死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者についても民法711条を類推適用して、固有の慰謝料が認められることになります。

【参考判例 最判昭和49年12月17日】
 「不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。本件において、原審が適法に確定したところによれば、被上告人B1は、Dの夫である被上告人B2の実妹であり、原審の口頭弁論終結当時四六年に達していたが、幼児期に罹患した脊髄等カリエスの後遺症により跛行顕著な身体障害等級二号の身体障害者であるため、長年にわたりDと同居し、同女の庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続が期待されていたところ、同女の突然の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたというのであるから、被上告人B1は、民法七一一条の類推適用により、上告人に対し慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。」

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山本・竹川法律事務所

弁護士 山本  明生

弁護士 竹川   聡

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